医者ががんにかかったとき 竹中文良
私はかつてがん治療の消火器外科医として働いておりました。
がんを治すことに懸命に打ち込んできたわけですが、50歳代半ばころ、自分ががんの体験を経てから大きく考えが変わりました。
患者さんの気持ち、心というものを考えてこなかったことに気づきました。
私は55歳の時に大腸がんにかかりました。
これを発見したのは、全くの偶然でした。
夜中にゴルフから帰ってきて、寝ているときに、たまたま自分のお腹にしこりを見つけたのです。
はっと気がついて、その場でこれは大腸がんであろうと診断できました。
その瞬間に頭の中が真っ白になり、全身から汗が吹き出したのをいまでもはっきり覚えています。
自分ががんだと思った瞬間にそういうことが起ききたのです。
その時のショックを、となりのベッドで寝ていた家内を起こして伝えたり、助けを求めるということはなかったのですが、それでも、理屈を超えたものがあるんです。