難病 4

日本人の死に時より 医師の書

モルヒネで痛みは何とか抑えられましたが、身の置きようのないだるさは消えません。
マッサージも無効、便秘も口内炎も起こりました。
そしてある日、「先生、今まで負けたらあかんと思うてがんばってきたけど、もうダメ。地獄の苦しさや。あれ、やってくれませんか」と言います。
「あれ」が安楽死を指すことは明らかです。
「先生、自棄になっている言うてるのと違う。本気や。お願い。自分ではなかなか死ねないんや」

末期医療で、さまざまな治療法が開発され、死にもしない、助かりもしない、という状況が出てきました。
患者さんは、ただ苦しいだけなのだから、楽に死なせてあげたいという考えが出るのは当然です。
近代医療の発達する前の昔は、たいていの人が自分の家で自然に苦しまずに死んでいました。
自然に任せておけば、人間はそれほど苦しまずに死にます。
それは、動物の死を見ても明らかです。
死が苦しいのは、人間が治療と称して、あれこれ手を加えるからです。