「死に方」は「生き方」 中村仁一
我が国の平均寿命は、昭和22年には男性50.06歳、女性53.96歳でしたが、平成4年には、男性76.09歳、女性82.22歳となって、長寿世界一を誇り、その後も平均寿命は延び続け、ほとんどの人が長生きを手にすることができるようになりました。
人類の夢であった長寿が実現されたにもかかわらず、長寿を嘆いたり、持て余したり、さらには死ぬに死ねない「長寿地獄」の光景すら見受けられます。
これはたぶん、「人工長寿」のせいではないでしょうか。
つまり、自然淘汰の働く強いものだけが生き延びる自然長寿ではなく、老、病、弱の身が科学技術の力を借りて生き延びているからだと思います。
ともかく、老、病、弱の心身を抱えながら、生きなければならない人工長寿の時代は、長生きと引き換えに恐ろしいほどの試練を私たちに要求しているようです。
どうも長寿を手放しで喜べない理由に、病気があるようです。