医師の対談から
誰でも若いころは長生きがしたいと思いますが、いざ長生きをしてみると「こんなはずじゃなかった」と嘆く人は多いんです。
多くの人は、長生きの人はみんな元気だと勘違いしていて、認知症や寝たきりのことは考えません。
私が診ている患者さんの中にも、「早く死にたい」という人がたくさんいます。
「あちこち痛いし、目や耳が悪くなって読書もテレビも楽しめない、旅行にも行けないし、おいしいものもむせて呑み込めない。家族には邪魔者扱いされて、居所がない」と訴えます。
皮肉なことに、ずっと健康に留意されてきたがために、長生きしてしまう面もあります。
酒とかたばことか、身体に悪いことをしていれば適当なタイミングで死ねたのに、という患者さんもいます。
多くの人は、命が助かるということを「元通りになる」と同じ意味で理解しています。
一命を取り留めたが、植物状態になりました、ということもあります。
植物状態ならまだいい方で、あちこちから出血して顔がパンパンに腫れて、髪の毛が抜け落ちて、皮膚も黒色に変色して、やがて足の先から腐っていく、という状態になっても一命を取り留めたといえるわけです。
大学病院は治る患者さんの専門病院なんです。
手の施しようのない患者さんは、どんどん他の病院に回すんです。