近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠
がんには「がん幹細胞」という特殊な細胞があり、それが基になってがんが大きくなったり、転移したりすることが分かってきました。
がん幹細胞は、次々にがん細胞を生み出すことができる上に、環境の変化にも強いのです。
そのため、元の臓器とは環境の違う臓器に散りついて、そこでがん細胞をどんどん生み出すことができます。
つまり10年も20年も経ってから転移が現れるのは、転移はしたものの休眠していたがん幹細胞が、何かの拍子に目を覚ますからだと考えられるのです。
しかし、なぜ眠り込むのか、そしてまた目を覚ますのか、その理由はわかりません。
遺伝子の傷は、細胞が分裂するたびコピーされて受け継がれていきます。
古い細胞から分裂してできた新しい細胞にも、古い細胞の遺伝子の傷が受け継がれるのです。
さらに新しい細胞の遺伝子も、放射線や農薬などさまざまなものによって、新しい傷を負います。
また、分裂するときにコピーミスが起こって、元の遺伝子とは別の遺伝子ができてしまうこともあります。
このようにして、分裂するたびに遺伝子の傷は重なっていきます。
そのため盛んに分裂すればするほど、遺伝子の傷が増え、がんになりやすくなってしまうのです。