近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠
逸見政孝さんは、93年1月、定期検診で胃がんが見つかり、2月に胃の4分の3を切り取る手術を受けました。
最初は早期がんと診断されたようですが、お腹を開けてみるとスキルス胃がんという進行の早いがんで、すでに腹膜に転移がありました。
腹膜に転移がある以上、胃のがんを切り取っても逸見さんは治りません。
転移があるということは、がん細胞が血液やリンパ液に乗って、体内にばらまかれているということだからです。
それなのに、医者は胃を予定通り切り取りました。
切っても無駄だと分かっていて切ったのです。
しかも、傷跡にがんが再発していました。
体の表面では傷がケロイド状に盛り上がり、体の中では腹膜の傷に沿ってがんが増殖したのです。
仕方なく医者は8月に2回目の手術をします。
が、体の表面にできたケロイドを切り取っただけで、体の中は何もせず、傷を閉じてしまいました。
このとき、医者は逸見さんにきちんと説明しませんでした。
そのため、不信感を抱いた逸見さんは、東京女子医科大学病院に転院します。
東京女子医大で逸見さんは、手術の傷跡に長さ12センチ、幅5センチのがんが再発していると診断されました。
そして、放っておくと腸閉塞になる危険があるということで、9月に3回目の手術をすることが決まりました。