ココロの架け橋 中野敏治
ある日曜日の朝、中学校時代の3年間、私が担当した男子生徒から電話がかかってきました。
彼は、車代行の会社を経営していました。
電話に出ると、いきなり「先生、先生、元気!」と、耳が痛くなるほど元気な声で話しかけてきました。
「おー、朝からどうした? 元気すぎるぞ。久しぶりだな」と、会話を始めました。
彼はすぐに仕事の話しを始めました。
「先生さ、最近、俺のしている仕事、同業者が増えてさ、まいったよ。なかなか競争厳しいんだよな」
声は明るく元気なのですが、会社の経営は苦労している様子。
「他の車代行の会社と競争することを考えなくてもいいんじゃないの。自分の会社らしくすればいいんじゃない。お客様にどうしたら喜んでもえらえるか考えるだけだよ」と伝えると、彼は黙ったままでした。
「車の代行を使う人は、お酒を飲んでいる人だろう。お酒を飲んでいる人は、どうしてほしいのかな?」と彼に問いかけました。
少し時間をおいて彼が話し始めました。
「先生、そうだよな。小さいことだけど、板ガムや飴をお客さんに渡すだけでも違うよな。先生、ありがとう」というと、すぐに電話を切ったのです。