車いすカメラマン効果

下座に生きる 神渡良平

それにしても、車いすカメラマンの田島さんのような人を雇った栗原社長とは、ただ者ではありません。
そのことを聞いてみたいと質問をしました。
「田島さんを雇えば、五体満足なカメラマンを雇う以上に経費がかかりますよね。経営者としては二の足を踏んだでしょう?」
「経費のことは考えないわけではありませんでしたが、儲けることだけが事業ではありません。みんなが感動し励まされるならと決断しました」
「エレベーターもお付けになったそうですが、いくらかかりましたか?」
「特注サイズですから、二千万弱かかりました」

田島さんが武州養蜂園で働きだしてもう1年になります。
栗原社長に感想を求めると、予期せぬところに”田島効果”があったといいます。
「私たちと一緒に田島さんが働きだして、みんながやさしくなり、お互いに思いやるようになったのです。ハンディを持った人と一緒に働くと、私たちの中のやさしさや思いやりが出てくるんですね。ハンディのある人たちを施設に囲って見て見ぬふりをするのではなく、彼らと一緒に働くことによって、逆に私たちが教えられ、気づかされ、恩恵を受けるのです」

社員たちは社長が田島さんを雇ったという行為を見ていて、「この人は言っていることと、やっていることが一致している。この人だったらついて行ける」と、自分の会社に誇りがもてたのではないでしょうか。