足るを知る

「死に方」は「生き方」 中村仁一

時折、一人住まいのお年寄りが餓死しているのが見つかり、調べたら押入れに何千万円もの貯金通帳があったというニュースが流れます。
あの世に持っていけるわけでもないし、と世間は言いますが、死ぬ時期が明確でないからこそ、最も頼れるお金に手がつけられなかったのではないかとも思うのです。

生きていくうえでお金は必要なものですが、所詮最期はみな平等に、何も持たずにお棺の中に横たわる身であるという一点だけは、押さえておいた方がいいと思われます。
そういう意味で、秀吉が言ったと言われる「起きて半畳、寝て1畳、天下を取っても2合半」という言葉がとても好きなのです。

幸せとは、お金があることでも、病気がないことでもないと思います。
要は、与えられたものを頂いて素直に喜べるか、ありがたいと受け取れるかだと思うのです。

欲望には際限がありません。
50万円が欲しいと思って50万円貯まれば、今度は100万円欲しくなり、次には500万円、1,000万円、1億円とだんだん膨らんでいくものなのです。
際限なく膨らんでいくその欲望をどう制御できるかが、幸せであるかそうでないのかの分かれ目になると思います。
「小欲知足」「我、唯足るを知る」ということでしょうか。