謙虚に 謙虚に

ことばのご馳走 金平敬之助

私は同じビルにあるクリニックの先生のファンです。
理由は単純です。
こちらが横に座る。
先生は必ず椅子の向きを変え、きちんと相対してから、やさしく「どうですか?」と聞いてくれます。
ただこれだけで、私は先生のとりこになっています。

渡哲也さんが石原裕次郎さんの思い出を語っていました。
裕次郎さんが亡くなったとき、自分も共に死のうとしたそうです。
渡哲也さんは、それほど裕次郎さんを慕っていました。
そのきっかけは裕次郎さんのしぐさにあったといいます。

最初の出会いのときです。
当時すでに裕次郎さんは大スターでした。
当然こちらから初対面の挨拶に行こうとしました。
その前に裕次郎さんの方が先に席を立ちました。
近づいてきて、あの大きな体を折り曲げて言ってくれました。
「石原裕次郎です。よろしくお願いします」
丁寧なあいさつでした。