医者ががんにかかったとき 竹中文良
それから私は、今までやってきた勉強をもう一度やり直して、がんが再発しないための勉強をしました。
ところが、残念なことにアメリカの文献にも、ドイツの文献にも、大腸がんの手術の後で抗がん剤が効いたという明確な証拠がなかったのです。
その当時も、今でも、がんの手術が終わると再発を防ぐために抗がん剤を使います。
私も術後は抗がん剤を使っていました。
しかし抗がん剤はがんを抑える可能性がある代わりに、いろいろな副作用があります。
私の場合は、食欲がなくなる、下痢をするなどでした。
そこで、様々な文献を調べたあげく、私は主治医に抗がん剤をやめると伝えました。
一切このまま、自然に任せるという決定をしたのです。
そして主治医と話し合い、その後は何の治療もしないまま、今日に至ったというわけです。
一般的にいっても、がんの治療は非常に不確実なものをはらんでいます。
がんの医療というのは、手術、放射線療法、化学療法、この3つがオーソドックスな治療法です。
ところが、これをやったから絶対に治ると保証されているわけではありません。
しかも、再発するかどうかは、その時が来ないと分からないわけです。
こういった医療は、必ずメリット、デメリットがあります。
胃がんで胃を全摘したとします。
すると、がんは取れますが、今までとは全く違った生理の中で生きていかねばなりません。
抗がん剤は30~40%くらいの効果が保証されていますが、それは逆に60%~70%くらいは効かないということです。
しかも、唯がんに効かないというだけでなく、抗がん剤を打つことで正常な細胞も一緒にやられてしまうのです。