苦痛を緩和すると長生きする

私はガンで死にたい 小野寺時夫

ホスピスは「死ぬための施設」ではなく、「よく生きるため」の施設なのです。
このことが一般病院の医師にも患者さんにもよく認識されておらず、結果としてせっかくホスピスに入院しても、その価値があまりない患者さんが多いのです。
在宅で療養している人でも重症に近づくと、ホスピスに入院を希望する家族がいますが、これも「ホスピスは最終的な死を迎える場所」と誤解している面があります。
在宅療養している患者さんは、原則として病院に来る必要はなく、在宅療養支援クリニック医と連絡を取りながら、最後まで自宅で過ごす方がよいのです。
ただし呼吸苦の緩和を受けている肺がんや肺転移、白血病、多発性骨髄腫などの終末期は、死の直前に激しい呼吸苦に往診が間に合わないこともありますから、患者さんによってはホスピスに入院の方が安全かもしれません。

日本人は昔から痛みを我慢することが多く、耐えることを美徳とする傾向がありました。
また一方で、今日でも医師の疼痛緩和に対する配慮や技術が十分でないことが少なくありません。
痛みを我慢するのは何よりもつらいことで、安らかな最期を迎えるうえで最大の妨げです。
苦痛を我慢することは寿命を縮め、苦痛を緩和すると長生きすることが国際的にも認められています。
私がガン末期になって痛みなどの苦痛があったら、我慢することなく、十分に痛みを取ってもらうことを何よりも優先します。
苦しみながら死を迎えるのは人生最悪です。