老いの花道 河合隼雄
「ついに行く道とはかねて聞きしかど ききしにまさるこの花道ぞ」
これはどういうことかというと、亡くなった白洲正子さんのお話なんです。
白洲さんは病気でご臨終という状態になりながら、「大丈夫、大丈夫」と言われたそうです。
そしてその後、生き返ってこられました。
その時のことを、後に私に話してくれたんです。
白洲さんは、ものすごい花吹雪の道を歩いていたそうです。
そして、こんな花吹雪の道をいくのだから私は大丈夫よ、一人でちゃんと死にますよ、という意味で「大丈夫」と言ったんだと話しておられました。
それが私の中にあって、冒頭の句になったのです。
向こうへ行ったら、すごい花吹雪で、その向こうに白州さんがいて「ね、河合さん、すごかったでしょ!」と言ってくれたらいいなと思います。
こんな風に、時々先のことを考えてみる。
それは宗教を信じて何かをするということではなく、老いていく、死んでいくことの準備の1つになるのではないかと思っています。