日本人の生老病死 山折哲雄
良寛さんにこういう歌があります。
「散る桜 残る桜も 散る桜」
散っていく桜は人間の終末を象徴しています。
この世に踏みとどまって咲き続ける桜もある。
けれども、その桜もやがて散っていく。
そういうイメージを抱きながら、最期の時間を過ごす。
そこに、日本人の死に対する1種の美意識のようなものが輝き出ていると思いますね。
やはり良寛さんの歌に
「裏を見せ 表を見せて 散るもみぢ」
人間は嫌いな面、裏を見せながら、しかしちらっとまた美しい表を見せ、両面を見せながらやがて最期は美しく自然に散っていく。
そうすることで、安らかな最期を迎えようではないかという呼びかけです。
死に対しては、看取るものも含めて、こういう美意識の中で、イメージトレーニングをしながら考えていこうではないかと言っているような気がします。