生きがいの力 柴田高志
耳下腺がんの手術は8~9時間かかったようです。
麻酔から覚めると回復室でした。
ナースがやってきて「用があったら鳴らしてください」とカスタネットを持たされました。
気がついてみると、麻酔をかける時に使われた管、カニューレが口の中に入れられていて、しゃべることができないんですね。
しばらくすると、そのカニューレのせいで、のどに痰がたまり、とても気持ちが悪くなってきました。
そこでカスタネットを鳴らすと「何ですか」と偉そうに言いながらナースが来ました。
でも、痰がたまっていることを伝えようがないのです。
すると「傷が痛むんですか」と言われて、痛み止めの注射をされました。
これが非常に痛い注射なんです。
痛くもないのに痛い注射をされて、などと思いながらも1時間半か2時間半はうとうとする。
そしてまた目が覚めると気持ちが悪い。
また注射をされる。
3回目にようやく痰がたまったことに気がついてくれて、吸引してくれました。
やがて朝の6時になり、今度は優しいナースに交代しました。
「いかがですか。9時になったら担当のドクターが出てきます。経過がよかったらこの管を抜いてもらいますからね」と言ってくれまして、ホッとしました。
その時2つのことに気がつきましてね。
1つは、自分の意思を伝えられない苦痛。
そしてもう1つは、いつまで続くかわからない苦痛です。
限られた時間であれば、痛みは辛抱できるんですよ。
そんなことを回復室で学びました。