人は死ぬから幸福になれる 島田裕巳
「死が身近にあるときの死に対する怖れ」と「死が身近でなくなったときの死に対する怖れ」は、その性格が違います。
死が近いところにあるのなら「自分も近いうちに死ぬかもしれない」と考えますが、今健康であれば、そうした不安を抱いている人は少ないでしょう。
それでも、若い人の場合には、死への恐怖を感じてしまいます。
自我が目覚め、自分という存在を意識するようになると「自分の死」ということを考え、自分がこの世界から消え去ってしまうときのことを想ってそれに恐怖するのです。
「自分がある」ということは、「自分がいつかはなくなる」ということを意味しています。
自分がなくなるということは、どういうことなのだろうか。
今、ここにこうして生きていて、ものを感じ、いろいろなことを考えている自分が、消滅してしまうなどということが本当にあるのだろうか?と想像するのです。