今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊
大学受験を翌年に控えた娘さんを持つある患者さんは、大学生になった娘の姿が見られないことに嘆き、非常に苦しんでいました。
ところが、私と亡くなったご両親についての話しをしているうちに、その患者 さんが「自分がいつも、両親に見守られていると感じている」ことに思い当たりました。
そして「私も天国から、大学生になった娘の姿を見ることができるのですね」と、笑顔を見せてくれるようになったのです。
また、ガンが進行し、主治医から「これ以上の治療は難しい」と、私が勤めているホスピス病棟を紹介されたある患者さんは、最初のうち「残された時間は限られているし、生きていても意味がない」と言っていました。
しかし、ホスピスのスタッフに自分の思いを話すうちに、少しずつ気持ちが変化していったのでしょう 。
病気になって苦しむ中で気づいた家族の大切さ、人のやさしさを若い人に伝えたいと、文章に残すことを決めたのです。
自分が死んだ後でも、人生で学んだ大切なことを伝えることができる、こんなうれしいことはありませんと、その患者さんは目を輝かせていました。