臨終の際に苦しむのか?

私はがんで死にたい 小野寺時夫

多くの人が臨終の際に苦しむのではないかと心配しています。
しかし、ほとんどの場合そういうことはありません。
亡くなる数日前から1日中眠っているような状態になり、声掛けに対する反応も次第になくなります。
痛みや呼吸苦などの身体的苦痛を十分に取っている限り、精神的な苦痛もなく、「春眠の暁」のような気分でいるように思います。

稀ですが、声をかけると目を開いて「まだ生きていたんですか」という人もいます。
痛みや苦しみがないかを聞くと、首をかすかに振りながらニッコリする人もいます。
ただし、これには条件があります。
身体的な苦痛緩和が十分なされていること、医療者や家族がよく見守ってくれている安心感が患者さんにあること、死の直前に稀に襲う呼吸苦への対応を迅速にすることです。

血圧の低下や肺の酸素の取り込みが著しく少なくなって脳が酸欠状態になると、心地よさを感じるエンドルフィンなどの快楽物質がどっと分泌されるといいます。
死ぬということは、名実ともにゆっくりと気持ちよく永遠の眠りにつくことだと思います。