臓器移植でがんは治らない

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

結局、ジョブズさんは肝臓がダメになってしまい、09年3月に肝臓移植を受けました。
移植自体は成功したのですが、この時腹膜に斑点があったそうです。
つまり、がんが腹膜に転移していたわけです。
それでも一時は小安状態を保ち、仕事にも復帰していましたが、10年には再び体調が悪化、最終的には体のあちこちにがんが転移して、11年10月に亡くなりました。

ジョブズさんは、臓器移植までしたのに、がんを治すことができませんでした。
ジョブズさんの場合は、移植した時にすでに腹膜に転移があったようですから、肝臓を移植してもがんは治りません。
でも、腹膜転移がなくても、臓器移植でがんを治すことはできないのです。
どうしてかというと、本物のがんであれば、転移能力のあるがん細胞が、血液に乗って体中を巡っているからです。
臓器移植のような大掛かりな手術を受ければ、体は大きく傷つき、抵抗力が落ちます。
そこに、がんが取り付いてしまうのです。