脳性小児まひのカメラマン

下座に生きる 神渡良平

埼玉県深谷市の身体障害施設「皆光園」に住む脳性小児まひで寝たきりの「車いすカメラマン」田島隆宏さんから電話がありました。
「大変なことが起きました。私を雇ってもいいと言ってくださる社長さんが見えたのです。41歳になって、生まれて初めて就職できるようになりました」
田島さんが撮る写真は素晴らしいと聞きつけた栗原福男さんという社長さんが皆光園にわざわざ足を運び、1枚1枚写真を見「これならわが社のパンフレットに使えます。どうですか、わが社でカメラマンとして働きませんか」と誘われたというのです。

栗原社長は埼玉県熊谷市で武州養蜂園というミツバチの会社を経営しています。
田島さんはうれしかったものの躊躇しました。
「私はこんな体ですし、通勤は普通の自動車では行けません。特殊な車いすごと乗れるワゴン車がなければ通えません」
ところが栗原社長はこう言いました。
「そのことはもう考えており、ワゴン車はわが社で準備します。挑戦してみませんか」

田島さんは心が動きました。
若いころ、友達がみんな就職して人生への挑戦を始めたとき、「ああ取り残されてしまった」と落ち込み、一人悲嘆にくれたことがありました。
それなのに今、雇ってくださる人がいる。こんなうれしいことはありませんでした。