私はガンで死にたい 小野寺時夫
がんの末期に近づくにつれ、人体のすべての代謝機能が低下するので、その時期に豊富な栄養を与えることは、穏やかに徐々に死に移行する自然の経過を妨げている可能性があります。
また、多量の栄養を点滴されても、末期になると体が利用しきれず高血糖を起こします。
高血糖になると、尿量が増えて喉がひどく乾いてくることがあります。
水を十分に飲めるうちは大丈夫ですが、飲めなくなると次第に脱水が進み、ひどくなると脳細胞も脱水になって意識障害を起こして回復できなくなる危険もあります。
日本には、胃ろうからの栄養補給で生かされている人が、世界の中で飛びぬけて多く10万人もいるのです。
家族も飢え死にさせるのは忍びないと思って、胃ろうを作ることを受け入れるのですが、いったん作った以上中止するのは極めて困難で、何年も続くと家族も後悔し、施設に入れても次第に面会に来なくなる場合が多いのです。
老人病院や特別介護老人ホームには、意識のない、あるいは家族もわからない状態で、胃ろうからの栄養で何年も生かされている人が大勢います。
全く無言の人、時々奇声を上げる人などの光景を見るたび、私は情けないような、腹立たしいような気持になります。