生きること、創ること 小椋佳
人間は例外なく死を迎えます。
その限りでは、私たちの肉体は機能停止に向かって機能しているという言い方をせざるを得ないわけです。
しかし、最終的にはそうだとしても、通常はいのちを存続させるという方向で機能してくれています。
実は57歳の時、僕の胃はがんに冒されていました。
たまたま体験的に受けた人間ドックでそれが発見されたのです。
「早期発見ですから」という主治医の言葉に按じて、直ちに手術を受けました。
手術は8時間、胃の四分の三を切除する者でした。
がんを患ったということで、その後いろいろな取材を受けましたが、必ず出てきた質問が「がんとの闘病人生観はどう変わりましたか?」というものです。
これには閉口しました。
変わったことを当然のように期待されていることが分かるのです。
僕は何も変わっていないのにです。