老いることは楽しみが増えること

人は死ぬから幸福になれる 島田裕巳

現代では、老後の不安ということが言われるようになり、若い世代は「将来、年金をもらって生活することが難しくなるのではないか?」という恐れを抱いています。
そうしたことも、若いうちに楽しんでおこうという意識に結び付いているかもしれません。
結婚して家族ができると制約が多くなり、自由に遊ぶこともできなくなる。
若い世代が結婚に対して消極的になるのは、そうした理由があるからでしょう。

若い人たちは「自分は好きなことをしたいので、制約は嫌だから結婚しない・・」などと言います。
しかし、果たしてその好きなことというのは、どういうものなのでしょうか?
「気ままに暮らす」「他人から干渉されずに生きる」という以上の意味はないように思われます。
つまり、若い人の言う好きなことは、それほどたいしたことではないのです。

むしろ年齢を重ねた方が、自分にとって何が好きなのかが見えてきます。
経験を重ねることで、楽しめる見方もわかってきます。
物事を楽しむには、やはり心の余裕が必要です。
その余裕が、若い間はなかなか持てないのです。

年を取った時にこそ、人生を楽しむことができる。
その秘密を知った時、老いることへの恐れは消えていきます。
老いることはむしろ、楽しみが増えることなのではないか、そのように考えることができれば、老いることへの意識は変わります。