細胞を顕微鏡で見てがんかどうか判断する

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

本物のがんとがんもどきは、両方とも顔つきが凶悪で、見分けがつきません。
そのため、がんもどきも本物のがんも一緒くたにされているのですが、そもそもなぜ見た目などという曖昧なものが、診断基準になっているのでしょうか?

昔は、がんと診断された人は必ず死んでいました。
体の中を調べる検査手段がなかったために、お腹が膨れてきても原因が分かりません。
どうしたらいいかわからず、手をこまねいているうちに死んでしまった。
それで解剖してみたら、胃がんがあって肝転移があった、という具合に体中にがんがあることが分かった。
そんな風だったころに、がん=死というイメージが出来上がったのです。

戦後、さまざまな検査手段が発見されて、体の中を見られるようになると、小さな病変が見つかるようになりました。
さて、これをどう診断するかといったときに、かつて人々を殺したがんと共通する所見があれば、これをがんとしたのです。
つまり、見て同じと思えば、がんということにしたのです。
その際の判断基準は、転移があるかどうかです。
画像検査で体の中を調べて転移があれば、これは昔のがんと同じだと判断できます。
それが少し早い段階で見つかったものだというわけです。
ところが、転移がない場合があります。
転移がなく、病巣が1か所しかない場合にどうするか?

そこで登場したのが、病理検査です。
その部分の細胞を取って顕微鏡で見て、かつてがんと診断していたものと同じ特徴があれば、がんと診断することにしたのです。