簡単なのに難しいこと

「手紙屋」 喜多川泰

本当は簡単なのに、難しいと思ってしまうことについてのお話です。
まず、次の2つのことのうちどちらが難しいか、ちょっと考えてみてください。
「歴史上の人物の名前を新たに10人覚えること」
「あなたの知っている人物の名前を1人忘れること」
こう考えるとすぐ分かることなのですが、人間にとって難しいのは覚えることではなく、忘れることなのです。
あなたが、もう覚えてしまった名前を意識的に忘れることは、たとえそれが1人であっても、ほとんど不可能に近いことです。
本当に難しいことは、覚えることではありません。
忘れたいのに忘れられないから苦しむのです。

こう考えると、一度覚えたことを忘れるより、新しいことを覚える方が簡単なのかあ、なんてちょっと楽な気持ちになってきませんか?
実際、人間は覚えるのが得意な生き物なんです。
そうはいっても、英単語や歴史の年号なんてとっとも覚えられないだけど・・・

それは、興味の問題です。
ある事柄に関する興味と記憶は、密接に関係しているのです。
人は興味を持っている事柄に対しては、記憶力がよく働きます。
きっと、今まで経験してきたあらゆることと結び付けて、自分のものにしようとするからでしょう。