近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠
筑紫哲也さんは、2008年11月に肺がんで亡くなりました。(享年73歳)
抗がん剤、東洋医学、放射線のピンポイント照射と、治療法と病院を転々と変えながら、1年半にわたってがんと闘い続けた最期でした。
筑紫さんがまだ元気だったころ、僕は、筑紫さんがキャスターを務めていたTBSの番組に出演したことがあります。
その時僕は、がん検診は意味がないこと、がんに対して手術や抗がん剤はほとんど役に立たないこと、がんは放置が一番いいことを説明し、筑紫さんは理解してくれたと思っていました。
でも、そうではありませんでした。
いざ自分ががんを宣告されたとき、放置することはできなかったのでしょう。
人は弱いものです。
医者にこうすれば治る可能性がある、と言われれば、筑紫さんでさえ、その言葉を信じてしまうのです。
2007年5月、咳が止まらなくなった筑紫さんは、家族の勧めで検査を受け、肺がんが見つかりました。
ステージはⅢbと、末期の1歩手前。
手術は不可能、抗がん剤が唯一の治療法だと、医者に言われます。
そのため筑紫さんは、がんであることを番組で自ら告げ、番組を休んで放射線と抗がん剤の治療を受けます。
肺がんの場合、特に筑紫さんのようなヘビースモーカーの場合は、肺が傷んでいるために、抗がん剤の毒性が強く出てしまいます。
したがって筑紫さんには抗がん剤を使わず、放射線だけにした方がまだよかったはずです。