穏やかな気持ちで人生最後のときを過ごせる

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

死を前にした患者さんの多くが、自宅に帰ることを望みます。
最新設備を誇る病院やホスピスのきれいな病室にいるよりも、古くてしみだらけの我が家の天井を見ていた方が、心が安らぐというのです。
実際、病院にいたときと同じ薬を飲んでおり、病状にも変化がないにもかかわらず、家に帰るだけで表情ががらりと明るくなるという方は少なくありません。
たとえ一時帰宅であっても、「やっぱり家はいいね」というのです。

一方で、在宅よりも病院の方が向いている人もいます。
病気に対する不安感が強く、呼べばすぐに看護師や医師が来てくれることに安心する人は、病院で過ごす方が精神的にも安定するかもしれません。
「家族の人に下の世話をさせるのは申し訳ない」と思う人は、その方が安心して過ごせるでしょう。

人生の最後をどこでどのようにして迎えたいのか、それは人により異なります。
しかしいずれにせよ、必要な設備が整備され、人材が育成され、すべての人がその人が望む形で、穏やかな気持ちで人生最後のときを過ごせるような世の中であって欲しい、私はそう思っています。