私のガン体験

生きがいの力 柴田高志

ここで、私自身のガン体験についてお話ししたいと思います。
実は42歳の時、右の耳下腺がんにかかり手術を受けることになったのです。
その半年前の秋、右の耳の下にやわらかい小豆大の腫瘤ができ、これを押さえるとつぶれて口の中に液が流れ出しました。
それがだんだん大きくなり、翌年の春頃には急に大きくなって、周囲が固くなってきたのです。
これはおかしいぞと思い、外科医に診てもらったところ「すぐ手術をしないといかんぞ」と言われました。

そこで、すぐに手術をして腫瘤の半分を取り、検査してもらったところ、がんではないだろうと診断され、あとの半分を残したまま切開部は閉じられました。

ところが10日ほどして、大学病院から電話がありました。
研究室に行ってみると、神妙な顔をした同級生が7~8人おり、机の真ん中に顕微鏡がおいてあります。
覗いてみると、端の方にたくさんのガン細胞が見えました。
「それは、おまえの手術標本だよ。残っている方にもまだガンがあるんだ。だからもう一回手術をしようじゃないか。ただ残っているガンの中に、顔の表情をつくる顔面神経があって、それも一緒に切ってしまわなければならない。後で皮下の神経を移植するという大掛かりな根治手術になるがどうだ?」
そう言われ、一瞬とまどいました。
しかし、1日も早く現場復帰し、2つの施設を軌道に乗せたい、自分がやらなくちゃいかんという思いが強くありました。
そこで「君たちの判断に任せるから、専門家として一番いい方法を考えてくれ」と伝えました。