眠りの延長線上に死がある

人は死ぬから幸福になれる 島田裕巳

年をとれば、うたた寝をしていることがあります。
テレビのドラマを見ていたのに、いつの間にか眠ってしまっているということがよく起こるようになります。
このうたた寝の世界は、幽玄の世界とかなり近いものです。
眠ることによって、現実の世界から離れて、別の世界に入っていく。
それによって、ストレスから解き放たれていく。
そんな知恵を日本人は身につけています。

そして夢うつつの世界では、恨みも悲しみも消えていきます。
年を取れば取るほど、うたた寝の機会は増えていきます。
起きている時間も半分は眠っています。
お年寄りの世界はそんなものです。

死に至るということは、この眠っている時間がしだいに増え、起きている時間よりも長くなっていくなかで起こることなのではないでしょうか。