相手を知ることで興味と関心が出てくる

老いの花道 河合隼雄

私の知っている施設では、高齢者の方一人一人に「何でもいいですから、これがしたい、ということはありませんか?」と聞いたそうです。
すると「もうこの年になったらない・・」と言いながら、次第に「恥ずかしいから言えんのやけど、いっぺん歌舞伎が見てみたかった・・」なんていう答えが出てくる。
興味深いことに、答えの中には「生まれ故郷へ行ってみたい」というのが相当多かったそうですね。
そして、その「やりたいこと」を名前と一緒に貼りだすと、いっぺんに会話が増えたそうです。
興味と関心が出てくると、話がはずんでくるのです。

一人一人の願いが出てきたことで、仲間意識が生まれたという成功例ですね。
ところで、我々はよく、相手がものをいう前に自分から言い過ぎてしまいます。
しかし、高齢者の方と話すときは、出てくる言葉を待つ、という態度が大切です。
私は以前、高齢者の方に自分の子どもの頃を思い出してもらい、自分史として編集したことがあります。
聞いたことをまとめて原稿を持っていくと、「これは俺の言ったことと違う。こっちの方がいい!」と直される。
この作業がうれしんですね。
そして、とても生き生きとしてこられます。