目の前の人生を精一杯生きる

人は死ぬから幸福になれる 島田裕巳

自分の人生というキャンパスに白の部分が多いということは、まだまだ自分が固まっていないということを意味します。
空白があまりにも多いからこそ、ふと自分の死のことを想って、それに恐怖してしまうのです。

年を取っていくなかで、自分に与えられた仕事を精一杯やりとげ、結婚し、家族も作り、子どもを育て上げ、さらには孫まで授かる。
たくさんのことをやり、多くの人と出会い、さまざまな経験を重ねていくならば、次第に死を想うときが訪れなくなっていきます。
充実した人生を送っていれば、それに忙しく、ふと死を想うようなときが訪れません。
たとえそういう時が訪れても、若いときと年齢を重ねたときでは、考え方や受け取り方が違ってきます。
あるいは、すぐに別のことを考えるようになり、死を想う時間が長く続かなくなるのです。