なんとめでたいご臨終 小笠原文雄
一人暮らしで目がほとんど見えず、耳も聞こえにくい、それでも家にいたいと願い続けた河合さん(80歳 女性)の事例を紹介します。
往診依頼を受けて、河合さんのお宅に往診に行きました。
「先生、最近歩くと苦しくて立つのもやっとだから病院に行けなくて。一人でもこのまま家にいたいので往診してもらえないかと思ってね」
「一人暮らしでも大丈夫ですよ。在宅ホスピス緩和ケアをしますからね」
すぐにケアカンファレンスを開き、医療と介護の両面から支えるための話し合いを行って、訪問診療と訪問看護は毎週交代しながら24時間対応すること、訪問介護は1日2回入ることが決まりました。
「目が見えなくてもね、家だとどこに何があるかわかるのよ。トイレだって這いずっていけるし、ヘルパーさんも美味しいご飯を作ってくれる。隣の奥さんも様子を見に来てくれて、家に居られて本当にうれしい」
と言って、在宅ホスピス緩和ケアを開始してから笑顔で過ごしていた河合さん。
ところがある日のこと、突然腰に痛みを感じ、動けなくなりました。
転んだわけではないのに、ベッドから降りられなくなったのです。
しかし、腰の痛みの原因を突き止めるためには、病院で精査する必要があると判断したので、河合さんに入院を勧めました。
ところが、河合さんは頑なに拒否します。