白衣を脱ぎすて

いつでも死ねる 帯津良一

医者というのは、「先生」と呼ばれるくらいですから、ある種の権力です。
私が若いころは、医者が言うことに異を唱えることはありませんでした。
基本的に、医者と患者さんの間には、どうしても上下関係が生じてしまいます。
だからこそ、医者は謙虚になって、患者さんとは同じ目線で関わらないといけないのです。

昔の町医者には、普段着にサンダル履きで診察をしている人が結構いました。
そういう医者は、患者さんとの間に上下関係をつくろうなどということは考えず、仲間という意識で診察していたはずです。
私は、大学病院のときには、よれよれの白衣を着ていましたし、独立してからは、診察のときに白衣を着るのをやめてしまいました。
昔の町医者に倣って、普段着にサンダル履きです。

きれいな白衣を着たからといって、いい治療ができるわけではありません。
一番大切なことは、患者さんといかに心を通わせるかで、ピカピカの白衣はそのじゃまになると私は思っています。