いのちの言葉 ホスピス医 柏木哲夫医師
末期ガン患者さんが痛みが強い場合、一番初めに来て欲しいと思う人は、心の悩みに耳を傾けてくれる精神科医でも、痛みが早く癒えるように祈ってくれる牧師さんでもありません。
一番望むのは、自分の痛みがどういう原因からなり、その痛みを治すためには、どのような薬をどのくらいの量、どのような間隔で処方したらよいかを診断して、すぐに痛みを取ってくれる医者が来てくれることです。
私は、この言葉に参ってしまいました。
私は精神科医であり、内科的な手段に関しては非常に弱かったからです。
そこで、ホスピスをやろうと思うならば、痛みのコントロール、他の症状のコントロール、内科的な知識や経験を身につけようと決心しました。
私は、1984年にホスピスを設立し、それ以降、2,500人の方々を看取ってきました。
そうする中で、患者さんから教えられたことは私の一番の宝物になっています。
例えば、患者さんが入院してこられて、しばらくすると「ここに来て癒されました」とよく言われます。
今まで、いろいろな病院で診断を受け、治療を受けたものの、つらさ、さみしさ、やるせなさといった気持ちを理解してもらえなかった。
その患者さんがホスピスに来てはじめて、じっくりと話しを聞いてもらい、自分のつらい気持ちが分かってもらえて、「癒されました」と言ってくれたのです。