病院は死に場所としてふさわしくない

「死に方」は「生き方」 中村仁一

今病院で亡くなる人の数は8割弱と言われています。
とくに、がんで亡くなる人は9割以上と思われます。
この数字から見ると、病院は健康を回復する場所と同時に、死に場所になっていると言えそうです。
では病院は、死に場所としてふさわしい所と言えるのでしょうか?

おおむね近代病院は、どこも原則としてけがや急性の病気に対応した構造、人員配置になっていて、亡くなっていく人に対応できる態勢にはなっていません。
このような不適格な場所で、人生の幕を下ろさなければならないというのは気の毒としかいいようがありません。

しかも極端な場合は、身体にある穴という穴すべてに管を差し込まれ、何本もの導線で機器につながれたいわゆるスパゲッティ症候群の状態で、親しい者との交わりも断たれ、孤独と寂寥と恐怖の中でありとあらゆる医学的処置を施された末でなければ、死ぬことさえ許されないありさまなのです。

これを避けるためには、普段から現代医学の限界を認識し、死に場所をも考慮しておかなければなりません。
と言いましても、核家族化が進行して介護力が低下し、さらに往診ももう1つという現状を考えますと、自宅で家族に看取られながら死ねるというのは最高の贅沢といえるのではないでしょうか。