「死に方」は「生き方」 中村仁一
生活習慣病の治療では、薬の服用がどうしても長期にわたることになりますから、薬のことを少し論じてみたいと思います。
薬漬け云々が言われていますが、何かあればすぐに薬を飲みたがったり、「私は薬だけが頼りなのです」と言われる方が多く、薬信仰はまだかなり根強いものがあると思います。
少し前までは、病気には薬を服用した方が早く良くなると受け取られていたようですが、最近では飲まないと治らないと考える人たちが増えてきたように感じます。
不摂生や生活のバランスの崩れまでも、薬を頼って解決を図ろうとしているかのようなのです。
不摂生はそれを正すのが本筋で、薬で代替のきく問題ではないはずです。
ところで、病気を治すのは医師なのでしょうか、それとも薬なのでしょうか。
実は病気を治すのは、本来私たちの身体に備わっている自然に治す力、自然治癒力であって、医師でも薬でもないのです。
医療者の役割は、専門家として、患者さん自身が治そうとしている上で障害となっているものがあれば、それを取り除く手伝いをしたり、あるいは薬などを使って治そうとしているのを、側面援助することにあるのです。
薬がひとり、力ずくで病気を叩き伏せるわけではないのです。
ですから、どんなに高価な薬を使おうと、患者さんの身体が薬に反応してくれなければ効果の表れようがありません。
例えば、傷ができたときに薬をつけますが、傷薬が治しているわけではありません。
化膿させると治りが長引くので、それを防ぐために薬を塗っているだけなのです。