「死に方」は「生き方」 中村仁一
生き物は繁殖を終えたら死ぬ。
これは、自然界のおきてです。
その典型を、産卵を終えたらすぐ息絶える鮭や、花を咲かせ実を結んだら枯れる1年草に見ることができます。
いつ死んでも不思議のない身が、ほかの生き物のいのちを奪って生かされているわけですから、果たさなければいけない役目があるはずです。
私はそれには2つあるのではないかと考えています。
1つは、年を取るとあちこち具合が悪くなりますが、それらと上手に折り合いをつけながら生きて見せること。
つまり、老いる姿を見せること。
もう1つは、できるだけ自然に死ぬことで、死にゆく姿を見せること。
これらにより、後継の者に安心感を与えることができるのです。
うちの爺さんは具合が悪いと言いながらも、あんなふうに生きていたな、それならそんなに気にすることもないとか、死ぬってあんなに安らかなのか、それならそんなに怖がることはないな、というふうにです。