「死に方」は「生き方」 中村仁一
病気が治るとは2つの内容が含まれていると思います。
1つは、病気と縁を切る、病気を駆逐することであり、もう1つは、症状が消失する、軽くなることです。
急性の感染症といわれる病気では、2つの内容は全く同じ状態を示します。
たとえば、風邪や肺炎では、熱やのどの痛みや咳や痰などの症状が亡くなった時には、同時に病気と縁が切れたことも意味します。
ところが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の場合は、少し様子が違います。
今まで異常のなかった人が、急にめまいがし、耳鳴りがして頭が重く、肩がこるようになったので、近所の診療所で診てもらったところ、血圧が240も上がっていたとします。
そこで、これは大変というので塩分を控えるようになどと、生活上の注意を受け、血圧を下げる薬をもらって、しばらく服用していたところ、症状が取れ、血圧も全く正常化したとします。
本当は症状が取れて、血圧が正常になったのですから、これは治ったと考えていいはずです。
ところが、風邪や肺炎と違うところは、治ったと思っていたものが、塩分を取りすぎたり、心労が重なったり、不摂生をしたりすると、また血圧が高くなり、いろいろな症状が出てくるところなのです。
つまり、病気と縁を切るという意味では、治っていなかったのです。
病気が治るとは、病気と縁を切るという意味で使っています。
ということは、高血圧や糖尿病などの生活習慣病は治らないということになるのです。