70歳からの選択 和田秀樹
これまで、末期ガンでモルヒネを使うと寿命が縮むと、長い間言われてきました。
そのため、痛みがあってもモルヒネを使った緩和ケアはせず、抗がん剤などでの治療を続ける方がいいと信じられてきたのです。
ところが、最近ではモルヒネを投与して痛みをとった方が、患者も楽になってQOLが上がり、食べたり動いたりできるようになるため、免疫力が上がって延命効果があるということがわかっています。
すでにあるガン細胞を叩いたり、増殖を予防するための積極的な治療をしたり、あるいは80歳を過ぎてからの大量の薬を投入して治療オンリーの生き方をするよりも、体も心も我慢しない、薬でストレスレスな方法を選んだ方が、むしろ寿命が延びるというのも、体の不思議なところなのです。
とにかく高齢になり、死期がある程度見えてきたのであれば、楽な状態でいたいと思うのは、人間の権利であり、医者が決めることではないと信じています。