生きる 1

27歳で進行性のスキルガンになった男性は、「あなたの病気はガンで、完治するのは難しい」と伝えられた時、これが現実に起きていることだとは信じられなかったといいました。
人間は、想定をはるかに超える衝撃的な出来事に会うと、心の機能がバラバラになってしまい、目の前に起こっていることが認識できても、それが現実とは思えなかったり、記憶に定着しないということがあります。

男性は翌日目覚めたときに、「ああ、やっぱり昨日のことは現実なんだ!」という実感と共に、激しい絶望感が一気に襲ってきたといいます。
そして次に、怒りの感情が出てきました。
怒りは「不公平だ!」「理不尽だ!」「なぜ、俺なんだ!」というようなもので、自分を守るために必要な感情なのだそうです。

やがて、怒りの感情がおさまってくると、今度は悲しみで気持ちが一杯になりました。
悲しみは「自分にとって大切なものを失った」時に生じる感情で、心を癒す働きがあります。

こうした経過を経て、「人生とはそもそも平等ではないんだ・・」という現実を理解し、少しずつ自分と向き合うようになれたと言っています。

死を考えるのは、死ぬためではありません。
より良く生きるためなのです。
死という現実を避けようとしても、死と向き合わなければならないときは必ず来ます。