人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭
結局、欲という言葉を持ち出されたことで、宮田家の5人兄弟は、全員、自分たちが何か悪いことを言っているような気がして、何も反論できなくなったのでした。
そうは言っても、世間の慣習のようなものに無縁でいられるわけではありません。
「お正月にお年玉? 何それ」
「クリスマスや誕生日にプレゼント? 何それ」
宮田家では親は何も教えてくれませんから、兄弟同士で情報を交換していました。
友達の誕生日会に手ぶらで行って、恥ずかしい思いをした経験から、弟に「誕生日会にはプレゼントを持っていくものだ」と教えてあげるようなこともありました。
もっとも、教えてもらったところで、プレゼントを買うお金があるはずもないので、それはそれ、絵をかいたり、手作りのものを贈ったりしました。
そこで、兄弟はみんな、ある年齢になるとアルバイトをしてお金を稼ぎました。
そして、その中から、まだ働くことのできない弟にお小遣いを渡しもしました。
新聞配達をしたり、原っぱで磁石を引っ張って鉄くずを集め、それを鉄くず屋さんに持っていって買ってもらったりしたのです。
ある時、鉄くず屋さんで山積みになっている壊れた自転車に目を付けました。
それを数台タダでもらって帰って分解し、それぞれ使えるパーツを組み立てて1台の自転車を作り上げました。
するとそれが、2,000円、3,000円という値段で売れるのです。
ちゃんと乗れる自転車のしては安いというので、近所から注文が来るようになりました。
貧乏であればこその、生きるための知恵が、確実に身についていったということでしょう。