生きる目標は「仕事」

生きがいの力 柴田高志

そこで、モンブランの山登りを全国の方に参加を呼び掛けると、登山をしたことがないような方まで、7人ものがん闘病者の方が集まりました。
そして4807メートルと、富士山より1000メートルも高いモンブランに登ったのです。

一番最初に登頂されたNさんという方は、直腸がんの手術をして、人工肛門をつけていました。
その手術の4年後には、肺に8個の転移がんができました。
最初の病院では、潰瘍性の大腸炎ということで手術を受けていたらしく、最近がんと知ったそうです。
そこから、生き方をがらっと変えられました。
ちょうどその頃、モンブランの話を聞いて、山に登ったこともないのに「よし、自分も登ってみよう」という気になり、2年ほどトレーニングを積んで、登頂に挑戦されたわけです。

登頂後、Nさんは2週間ぐらいかけてヨーロッパの各地を旅して、がんの闘病者の方たちと交流し、帰ってきました。
そして成田空港で記者会見し、その日のうちに広島の家に帰りました。
Nさんは、記者会見で「これからの生きる目標は何になさるんですか?」と聞かれ、「仕事です」と答えていました。
翌朝、テレビのニュースをつけたら、仕事用のヘルメットを被ったNさんが映っていました。
帰国した翌日から、仕事をしていたんですね。