父の後悔 2

それから夜になって、お父さんが書斎で新聞を読んでいるとき、お前は悲しげな眼つきをして、おずおずと部屋に入ってきたね。
うるさそうに私がお前を目を上げると、お前は入り口のところで入ろうかどうか、ためらっていた。
「何の用だ!」と私が怒鳴ると、お前は何も言わずにさっと私のそばに駆け寄り、両手を私の首に巻き付けて、私にキスをした。
お前の小さな両腕には、神様が植え付けてくださった愛情がこもっていた・・・。
どんなに、ないがしろにされても「決して枯れることのない愛情」だと思った。
やがてお前は、バタバタと足音を立てて二階の部屋に行ってしまった。

ところが坊や、そのすぐ後でお父さんは何とも言えない不安に襲われ、手にした新聞を落としてしまったんだ。
何というひどい習慣に、お父さんは取りつかれていたのだろう!!!
叱っているばかりいる習慣・・!、まだ、ほんの子供に過ぎないお前に、お父さんは何ということをしてきたのだろう!!
決してお前を愛していないわけではないのに・・・あぁ・・・。
お父さんは、まだ年端もゆかないお前に、無理なことを期待しすぎていたのだ。
お前を大人と同列に考えていたのだ。

お前の中には、善良な、立派な、真実なものがいっぱいある。
お前の優しい心根は、ちょうど山の向こうから広がってくる曙を見るようだ。
お前がお父さんに飛びつき、お休みのキスをしてくれたとき、そのことがお父さんにははっきり分かったんだ。
他のことは問題ではない。
お父さんは、お前に詫びたくて、今こうして膝まずいているんだよ、坊や。