生きがいの力 柴田高志
私は医者になって45年になります。
瀬戸内海に面した、岡山県倉敷市下津井という、人口1万人ほどの無医地区同然の漁師町にかかわって、いろいろな活動を続けてきました。
その最中に私自身が右の耳下腺がんにかかり、手術を3回受けました。
こうした経験から、医療や福祉について気づいたことや考えたこと、そして学んだことをお話ししたいと思います。
下津井の漁師さんたちにお会いして、「いつも医者がいない、お金がないのでなかなか医者にかかることもできない」といった医療事情を聞き、何とか役に立ちたいという気持ちから、個人で夜間診療所を開業したのです。
そこで、どんな病気の方でも引き受けようと、毎日、120人くらいの方を診察しておりました。
また当時、近くの水島というところで石油コンビナートの建設が始まっており、それまで漁をしていた若者たちが工場に行きだしました。
そのため、他の地域よりも10年ぐらい早く、高齢化社会になってしまったのです。
そこで、寝たきりのお年寄りをお預かりできる特別養護老人ホームをつくらなければと、地元の人たちと一緒になって準備にかかりました。