無力だからこそよく聞き、共に苦しみを味わう

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

長い間、自分は無力であるという思いに苦しんだ果てに、私はようやく無力で良いのだと気がつきました。
それまでの私は医者である以上、患者さんの役に立たなければならないと思っていました。
そこには、医者なのだから患者さんの苦しみを和らげてあげなければという、どこか上からの意識があったのかもしれません。

ですが、医者といえども、所詮は弱い人間であり、できることは限界があります。
ほんとうに大事なのは、患者さんの問題をすべて解決することではなく、無力な自分を受け入れ、医者としてではなく1人の人間として患者さんに関わり続けることである。
たとえ無力でも、いや無力だからこそ、患者さんの言葉をきちんと聞き、共に苦しみを味わおうとすることもできる。
そのことに、ようやく思い立ったのです。