点滴はミネラルウォーター

大往生したけりゃとかかわるな 中村仁一

飲み込めない、飲み込まないお年寄りは、もう寿命がきているのです。
ほとんど寝たきりで、活動するわけではありません。
基礎代謝という最低エネルギー量も、健康なお年寄りに比べて低いはずです。
1日に、600キロカロリーから800キロカロリーもあれば充分と思われます。
身体が受け付けなくなっていますから、水分量が多ければむくみますし、気道の分泌量が増えてゼエゼエいいますので、1日に何回も喉の奥に管を入れて吸引しなければならず、苦しめなくてはなりません。

点滴注射や酸素吸入は、本人が幸せに死ねる過程を妨害する以外の何物でもないと考えていますので、私は原則として行いません。
しかし時々、家族から点滴注射くらいはしてほしいとの要望が出ることがあります。
「脱水は、意識レベルが低下して、夢うつつの状態になるので、願ってもないことなのですよ」と説明するのですが、点滴注射が栄養の塊のごとく誤解されている場合が圧倒的の多いのです。
そして、納得がいきかねる顔をしている家族には、点滴を飲んでもらうことにしています。
「これはブドウ糖がほんのわずか入っているミネラルウオーターなんですよ」と説明して。