今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊
死は耐えがたい絶望と希望を一緒に連れてきます。
余命半年と宣告された18歳の男性の看取りにかかわったことがあります。
彼は自分自身で病気や治療方法について調べ、抗がん剤などによる治療を受けないと決めました。
そうした治療に時間を費やすよりも、残りの時間を自分らしく自由に過ごしたいと考えたのです。
しかし両親は、わずかでも可能性があるなら治療を受けさせ、息子に1日でも長く生きてほしいと望みました。
ご両親の意見と、自分の選択を尊重し見守っていてほしい、という患者さんの意見は真っ向から対立し、親子の間には一時、険悪な雰囲気が漂いました。
やがて、ご両親は葛藤の末に、患者さんの意思を全面的に受け入れる覚悟を決めました。
少しでも長く生きてほしいという自分たちの願いをあきらめ、息子の最後の望みを聞き入れる、それは非常につらい決断です。
けれど、その決断によって、親子は良好な関係を取り戻し、ご両親が患者さんと腹を割って話す機会も増えました。
患者さんがこの世を去るまでの、わずかな時間。
それは、患者さんにとっても、残されるご家族にとっても、非常に貴重で大切なものであり、できればお互いにとって穏やかで幸せなものであってほしいと願っています。