「死に方」は「生き方」 中村仁一
脳内モルヒネのおかげで、すべて穏やかに死ねるような自然の仕組みが、私たちの体には備わっているのです。
ですから死ぬというのは、ぼんやりとした気持ちのいいまどろみの中での、この世からあの世への移行を意味し、つらいことも苦しいこともないのです。
強制的な人工栄養や点滴注射や酸素吸入はそれを邪魔していることになります。
したがって、死に際に「できるだけ手を尽くす」ことは、「できる限り苦しめる」ことに外なりません。
意識がなくなって一滴の水も口から入らなくなっても、すぐには亡くなりません。
老人ホームの同和園での平均は7日から10日です。
本人は気持ちよくウトウト状態なのですが、介護現場では1人で寂しいだろうからと、頻回に部屋を訪れて声掛けをするとか好きな音楽を流すとか、枕もとで家族と思い出話をして聞かせるとか、涙ぐましい努力が見られます。
でも本人は気持ちよくウトウトしているのだから、もっと静かにしておいてあげればいいのにと思ってしまいます。