老いの花道 河合隼雄
旅行に行くなら、交通機関を調べたり、どこを見学しようか、ご飯はどこで食べようかとか分かってから出かけます。
ところが、死という旅先のことは知らなすぎるということです。
この問題をしっかりやるべきだ、ということになると宗教の話になってきます。
私たち日本人は、生活と宗教が非常に強く結びついています。
たとえば、木を見ても、山を見てもそこに仏や神を感じながら生きています。
そういう生活をしていることをもっと真剣に考え直す必要があると思います。
あまりにも効率や楽しむことばかりを言っていると、死が分からなくなります。
朝起きて、太陽の方を見て拝むだけでも宗教であるわけですから、そういうことが大事ではないかと思っています。
伊勢物語の最後に
「つひに行く道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを」
死という道はついに行く道と、かねてから聞いていたけれど、昨日、今日とは思っていなかった。
ところが、今日その道を行きますよという歌です。