今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊
私は、死が目前に迫った患者さんに対し、ご家族の方や周囲の方から「語りかけ」をしていただくようにしています。
「耳は聞こえていますから、どうぞ声をかけてあげてください」とお願いするのです。
その際、たとえば、患者さんが高齢の男性の場合には「おじいさんが話せたら、今、息子さんや娘さんに、どのような言葉をかけると思いますか?」と、ご家族に尋ねます。
もし、「おじいちゃんは、おばあさんをよろしく頼む、兄弟仲良くやっていけ、という気がします・・」という答えが返ってきたら、「では、おばあちゃんのことは任せてください、兄弟仲良くしますとおじいちゃんに言ってあげてください、その内容が合っていたら、きっとおじいさまは、そうそう、そうなんだよと頷きますから・・」と伝えます。
こうした訓練をしておくと、患者さんが亡くなった後も、残された方はそれぞれの心の中で会話をすることができます。
そして、先に亡くなった人と、心と心の絆をしっかりと築くことができれば、孤独を感じることはなくなります。
ご自身が苦しいとき、悩んでいるときにも、そのつながりが必ず支えになるはじです。
一方で、語りかけをお願いするのは、患者さんが穏やかな気持ちで最後のときを迎えられるようにするためでもあります。